密集市街地の道における道路空間の特徴の抽出

片岡健一



1、 背景・問題意識

一般的な密集市街地の定義は「道路網が未整備でかつ低質建築物が高密度に建ち並んでいることにより、防災上、特に市街地大火に対して脆弱な市街地」 である。
 しかし、京都や金沢のような、いわゆる古都と呼ばれる中世の都や城下町の面影を残した街並みや、歴史の深い漁村なども定義から考えれば密集市街地であるにも関わらず、多くの人々に親しまれ日本の文化として保存の対象となっている場所もある。
 また歴史のある地方小都市ではその後の開発によって町並みは変化したが、土台には過去の町並、敷地割りを持ち、地域性を持って密集した密集市街地も存在する。
 このような密集市街地に関する研究は、
・京都や佃・月島などの定評のある路地をもつ密集市街地の「表出」や「ファサード」などの部分的要素
・京都の路地の形成プロセス
・農地の密集プロセス
などは明らかにされているが、密集市街地の道路空間を基盤的視点から捉えた研究はない。

2、 目的・方法

以上の問題意識から、
「密集市街地の類型化」、「道路空間を捉えるための指標の提示」を方法として、「従来漠然と言われている密集市街地の道路空間の特徴を明らかにすること」を目的とする。またその道路空間の操作について提案する。



3、 密集市街地の類型化


4、道路空間を捉えるための指標の提示


5、 密集市街地の道路空間の基本的なタイプの抽出



6、 操作ポイントと操作手法の提案



7.結論

・日本の主要な密集市街地を六つに類型化し、
 従来漠然と言われていた密集市街地の道路空間を五つの基本タイプに分類できた。
・近代以降の変化によって形成された密集市街地の道路空間に対する改善操作方法を提案した。

8.今後の課題

・本論文での類型化の指標の三点以外の指標の検討
・対象地を増やし、類型化と基本タイプの一般性と信頼性の向上
・操作ポイントと操作手法の検討と法律と関連させた具体的な方法の提案

9.謝辞

本論文を作成するにあたり、山梨県土木部都市計画課企画指導担当の副主幹である穂坂真さんには法律に関わる貴重な資料を頂き、市川大門町役場の建設課長の一瀬利一さん、都市開発係長の石原千秀さん、都市開発係主査の立川祐治さんには市川大門町の歴史と現在の町並みに関する貴重な資料を頂き、そして、市川大門町まちづくり懇談会のコンサルタントとして、「防災アンド都市づくり計画室」の吉川仁さん、「フェリックス」の稲垣道子さん、そして市川大門まちづくり懇談会の住民有志の皆様には、現場での貴重な体験と知識を学ばせて頂いたことに深く感謝いたします。

10.参考文献

□ 材野博司著
「都市の街割」 鹿島出版会1989年
□ 高橋康夫・吉田伸之・宮本雅明・伊藤毅編
 「図集 日本都市史」 東京大学出版会 1993年
□ 島村昇・鈴鹿幸雄他著
「京の町家」 鹿島出版会 1971年
□ 佐藤滋+街区環境研究会著
「現代に生きるまち〜東京のまちの過去・未来を読み取る〜」 彰国社 1990年
□ 斉藤義則
「スプロール地区における筆形状・接道状態の変化と細街路形成」
(1990年度 都市計画学会学術研究論文集)




2002年度卒業論文へ戻る


2003.5.4